クリスマスにもうチキンは食べない。世界最悪レベルの飼育環境。
前回は、たまごの残酷な生産過程についてお話しました。
オスの雛は、産まれてきた瞬間に不必要だと判断され殺されてしまうこと。
メスのニワトリは、たまごが産めなくなるまでボロボロになり、最後は殺され鶏肉やスープの素になること。
私たちの“おいしい食事”の裏側で、たくさんの命が苦しみ、殺されています。
今回は採卵農業に引き続き、世界一食べられている肉、鶏肉の生産過程についてお話します。
誕生日に殺されるヒナ
採卵鶏のヒナと同様、鶏肉用のヒナも生まれたその日に選別されます。
弱っている、小さすぎる、けがをしている、様々な理由で彼らは“不必要”と判断され、殺されます。
このように生産者の勝手な都合によって、毎年1,400万羽が殺されているのです。
恐ろしすぎる品種改良
(参照: 肉用鶏飼育のアニマルウェルフェア課題と解決策)
ヒナが出荷されるまでにいったいどれだけの日にちが必要かご存知ですか?
答えはわずか50日です。
本来であれば、ヒナがニワトリとして成長するまでに120日かかりますが、できるだけ早く効率的に生産するために、品種改良されています。
この品種改良はヒナの身体にとって大きな負担になっているのです。
膝や腰の関節は、体の急激な成長に追いつけず、体を支えきれなくなります。
歩くこと、立つことさえ困難になり、水や餌を摂取しに行くことができず死んでしまうヒナもいます。
他にも、急激な体重増加に心肺機能が追い付かずに死んでしまうヒナもいます。
彼らは、必死に鳴き声を上げ、苦しみながら死んでいきます。
劣悪な飼育環境
(参照: 肉用鶏飼育のアニマルウェルフェア課題と解決策)
日本の家畜の飼育環境は世界最悪レベルです。
養鶏場の飼育密度は、EU規制の1.4~1.7倍です。
1つの鶏舎には1万羽以上のヒナが収容されており、ヒナの急速な成長に伴い、密度はどんどん高くなります。
一日に2回ほど従業員が、ヒナの死体を回収しにくるのですが、足場がないほど鶏舎はヒナでいっぱいになっています。
ヒナたちは人が来ると恐怖で必死に逃げようとしますが、足が悪いので動き回ることが出来ません。
だから、従業員は足でヒナたちをかき分けながら前に進みます。
蹴ったり、足を踏むことは避けられません。
そして、ヒナを入れてから出荷するまでの50日間一度も糞尿を取り除くことはありません。
抜けた羽もそのまま放置されるため、地面はベトベトの粘土状になります。
異常な体重の増加、過密、地面の悪さによって、ヒナの足の裏と膝には炎症が起きます。
これらは、潰瘍を伴った化膿性皮膚炎で足の裏が真っ黒に焼けただれるのです。
もちろん、治療されることなどなく、糞尿に接すすることで症状はさらに悪化します。
ヒナは、痛みによって歩けなくなったり、発熱のストレスで苦しみます。
2011年の調査では、平均で87%のヒナに皮膚炎が認められています。
鶏肉は健康を害する?
ヒナがこの最悪な飼育環境で50日を生き抜けるのは、複数のワクチンと抗生物質を摂取させられているからです。
これらの弊害すでに出ており、世界ではこの鶏肉に含まれる薬剤耐性菌が、問題視されています。
薬剤耐性菌を体の弱い人や、高齢の方が摂取すると、抗菌薬による治療が難化する恐れがあります。
腸内に薬剤耐性菌を保有してしまうと、何かの病気になったときに必要な抗生物質が効かないかもしれないということです。
この薬剤耐性菌による死亡者数は、2050年にはがんの死亡者数を超えると言われています。
驚くことに、鶏肉からの薬剤耐性菌の検出率は、外国産が34%、国内産が59%という結果になっています。
日本国内では薬剤耐性菌により、8000人が死亡しているという発表もあり、国連も厚生労働省も対策を呼び掛けています。
“国内産は安全”という考えは一度見つめなおす必要があるかもしれません。
世界は次々にベターチキンへ
欧米を中心にベターチキンコミットメントというアニマルウェルフェアに配慮した肉養鶏の基準が広まってきています。
内容は、成長が遅い種類を選択する、飼育密度の緩和、屠畜はガスで行うなどがあります。
イギリスやドイツ、スウェーデンなどの一部の国のケンタッキー・フライド・チキンが2026年までにこのベターチキンに切り替えることを宣言しています。
他にも、バーガーキングやユニリーバなど欧米の228の企業がすでにベターチキンへの切り替えを宣言しています。
国際獣疫事務局(OIE)は、動物衛生とアニマルウェルフェアの間に決定的な相互関係が存在することを規定しています。
このOIEの規約作成に日本も携わっているにもかかわらず、日本には未だ彼らの福祉を守る法律は存在していません。
“肉”だからしょうがないのか。
ヒナたちは本当なら、昼間は太陽の光を浴びて遊び、夜はお母さんの温かい羽毛の中で眠ることができたはずです。
鶏舎の中で、身動きのできない状態で汚れていく地面や急速な身体の変化に耐えながらただただ時間が経つのを待っています。
消費者である私たちは“これらの現状はしょうがないことなのか”ということを今一度考えるべきだと感じています。
この記事のヒナという言葉が、イヌであったも同じように”家畜だからしょうがない”と思えるでしょうか。
小さい頃からごく普通のこととして、食卓にお肉が並んでいました。
だから、お肉を食べることは私にとって何もおかしなことではありませんでした。
しかし、残酷な畜産の裏側を知ったことをきっかけに、スーパーに殺された生き物が売られていることが“普通”ではないのではないかと感じるようになりました。
何気なく食べていたものは、数日前までは牛や豚、鶏として生きていたということに21年間の人生で初めて向き合ったのかもしれません。
そして、動物から搾取をしなくても現代の私たちにはたくさんの選択肢があるということを学び、なるべく動物性の食材を摂取しない食生活にシフトしました。
それは、自分がこれらの現状に加担したくないという思いがあるからです。
でも、私はサカナを食べることもありますし、卵や乳製品の入ったお菓子を食べることがあります。
時々、自分がヴィ―ガンなのか聞かれることがありますが、そうではありません。
でも、地球環境や動物、人に対する思いやりは同じだと思っています。
できるひとが、できるときに、できるだけ取り組んだらいいと私は思います。
そういう思いがあるだけでめちゃめちゃ素敵だと思います。
無理をして自分が嫌な思いをしたら元も子もないので。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
明日も素敵な一日になりますように。