安さには理由がある。ファストファッションの裏側。
服を選ぶとき、あなたはどんな条件で購入を決めますか?
ファストファッションの浸透により、トレンド性が高く、低価格な服が手に入りやすくなりました。
5,000円を出せば、ニットにジーンズ、ワンピースなど大抵のものは購入できます。
ブランドによっては、もっと安く購入できるかもしれません。
どうしてこんなに安く服を購入することが出来るのでしょうか?
今回は、ファストファッションの本当のコストについて、“労働搾取”の観点からお話します。
ファッションが大好きな方こそ知ってほしいファストファッションの真実です。
ファッションの歴史
かつて服は、個々のお客の要望に沿った服を仕立てる“オートクチュール”が主流でした。
その後、世界大恐慌や第二次世界大戦の影響により、プレタポルテ(既製服)が急速に成長しました。
20世紀半ばまでは、新しい服は春夏秋冬と季節のサイクルで作られていました。
デザイナーたちは何か月も先にシーズンごとのデザインを考え、消費者が求める服を作っていました。
現在は、”早くて、安い“ファストフードになぞらえて、最先端のトレンドを取り入れた低価格の服を短いサイクルで大量に生産、販売するファストファッションが主流となっています。
ファストファッションを牽引する多くの企業は、企画・開発・製造・販売に至るまですべてを一貫した業務形態を強みとしています。
こうすることで、流通コストの削減やトレンド性の高い服を短いスパンで生産し、お店に並べることが可能なのです。
安さには理由がある
ファッション企業が、途上国の雇用機会の創出に貢献していることは事実ですが、労働力の搾取が深刻化しています。
実際に、世界の6人に1人がファッション業界で働いています。
しかし、その多くは最低限の生活を営むことさえ難しく、低賃金で過酷な労働環境で働いているのです。
起業は利益のために貧困国であることを利用し、低賃金で働かせることで。できるだけ安く生産しようとしているのです。
また、労働者は18~35歳の女性が8割を占めていて、管理者などからの暴力やセクハラが横行していることも珍しくありません。
このような劣悪な労働条件で働かせる工場は“スウェットショップ”と呼ばれ、労働者には10歳前後の幼い子供の強制労働も含まれています。
アパレル史上最悪の事故は、防げるはずだった。
2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊で複数の縫製工場が入った複合ビルが崩壊し、1138名の死者と、2500名以上の負傷者を出しました。
ビルの名称から“ラナ・プラザの悲劇”と呼ばれるこの事故は、アパレル至上最悪の事故として労働搾取の実態が世界中に知らされるきっかけになりました。
事故の原因は、ずさんな安全管理でした。
ラナ・プラザは地元の有力者の権限によって、以前から耐震性を無視した違法な増築を繰り返していました。
事故の前日に、建物にひびが入ったことを従業員が発見、報告しましたが、ビルの所有者はそれを無視し、労働者たちに翌日まで帰宅しないように命じました。
労働者たちは非難することもできず、朝のラッシュアワーの間に事故が起きたのです。
変わらない現状
ラナ・プラザの悲劇から一か月後、安全監視機関として「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定」が設置され、H&MやZARAの親会社であるINDITEXなど欧州を中心とするアパレル企業222社が署名しました。
この協定には法的拘束力があり、参加企業がバングラデシュにある縫製工場の安全検査を行い、問題があれば改修費用を負担するというシステムとなっています。
協定によって、欠陥建築や火災警報器の未設置など9万7000件に及ぶ危険性が解決されてきましたが、未だに火災があとを絶たない状況が続いています。
この協定は5年の期限付きであり、バングラデシュの下級裁判所が活動停止を命じていましたが、現在でも火災が頻発する状況に対し危機感をもった協定側が2019年5月に上訴し、281日間の活動継続及び、後継組織への引継ぎが承認されました。
政府の動き
バングラデシュの縫製品油種産業の規模は300億ドル(約3兆2100億円)で、中国に次いで世界第2位です。
同時にバングラデシュは、国民の75%が1日2ドル未満で暮らす貧困層であるアジア最貧国です。
バングラデシュ政府はこの最貧国である状況を利用し、極めて安い人件費を売りにすることで、縫製産業の主要国に上り詰めました。
2019年1月には、最低賃金の引き上げを求めるストライキが行われました。
平和的な抗議行動であったにも関わらず、警察が催涙弾や放水銃などを群衆に向けました。
1人が死亡し、少なくとも65人が逮捕されました。
また、ストライキに参加した労働者のうち1万6000人が職を失い、そのほとんどが再就職できずにいます。
それは、縫製工場が作成するブラックリストに載せられているためです。
“安い“にはワケがある。
未だに、様々なブランドが超低価格で服を販売しています。
あなたも服を選ぶとき、考えてみてください。
あなたのファッションのために犠牲になっている人がいるかもしれないことを。
たった1,990円のワンピースを倫理的に作ることは不可能です。
安さの裏側には、犠牲になっている何かがあるはずです。
次回は、環境問題の観点からファッションについて語ります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
明日も、素敵な一日になりますように。